令和四年 十二月の歌会より

物価上がり給料上がらぬ日本人ワールドカップにうつつを忘れ 笹谷 逸郎

秋空に友の笑顔がふと浮かぶ返さず残った一冊の本     かつゆき

二十年夢もボールも共に追い幼馴染みがつなぎしゴール   いつつばし

白い雪見るは美しその中で生きるは何故に厳しきことか   初ちゃん

くず米を毎朝置きし餌台にある日ぽつりと団栗ひとつ    えいちゃん

サンシュウは赤き実をつけ秋珊瑚と名前をかえて二度目を華やぐ 小町

母遺す高級硯のを生かしたく書道習えば存外楽し      晴

人生の道の出口が見えそうだ事故も嫌だが逆走したい    イタヤンマン

建設のビル作業員空歩く吾は病院に臥して見上げる     まさこ

仙台は二千人のコロナ感染にどうもできずに日記に記すだけ 笑福

役満にロン上がりして宝くじ運だめしにと夢を求めて    水すまし

生き字引の町内の御夫婦亡くなりて冬空の下しみじみ偲ぶ  大須賀 章

水清く魚も消えた川の中朝の岸辺にじっとたたずむ     縁寿

 

令和四年 十一月の歌会より

愛犬を抱えて歩く若き母ブツブツ歩く幼い子供       かつゆき

娘の作るちらし寿司には思い出の家族で囲んだ会話も咲いて 水すまし

昼下がり汗もかかずにはや歩き運動不足を取り戻す冬    笹谷 逸朗

荒浜の日の出眩しく西向けば蔵王の峰に白き初雪      いつつばし

体躯のいい男の子走ればランドセル背で踊るよ小さくなって 小町

四十切りパークゴルフも楽しけりクラブの素振り百回を課す 大須賀 章

記念樹のわけも忘れし山茶花は真白き八重が今朝はパッと咲く 晴

来年も一年無事に行きたいな遣りたいことはまだまだあるぜ イタヤンマン

お土産の孫の手が今役に立ち思い出してはくすりと笑う   初ちゃん

小春日にはらふるひらひらきらきらと路上は黄金の落ち葉の吹雪 まさこ

二年ぶり自宅に戻りし母親を遺影の父が笑顔で迎える    えいちゃん

目覚めれば薬で始まり日に三度寝る前いつも薬でしめる   笑福

晩秋の茜の雲に頰染めて帰宅を急ぐランドセル鳴る     縁寿

 

令和四年 十月の歌会より

オットット踏まないように銀杏の実ケンケンする如とびはね通る 小町

目をつむりシャンソン聞けば秋を知る都のパリに枯葉がひらり  かつゆき

風にのりほのかに香るバスの中金木犀咲く路線を通り      水すまし

虫の音も何時しか消えて広瀬川雁の群れ来る北の空から     いつつばし

「ただいまー」明るく元気にドア開ける一人芝居の真空の家   まさこ

青空の下で稲刈るコンバインこの光景を平和と言わん      笹谷 逸朗

古き友久々に逢い昔話思い出しつつ語る幸せ          初ちゃん

「クソ婆あ」おどけて逃げる元気な子夏草ほどの背丈になりぬ  晴

まあまあとスコアを眺め夕暮れて心も静か蜩の声        笑福

同期会生きてる奴に出ろと言うこれで最後と脅しをかけて    イタヤンマン

薬菜のパークゴルフの練習会山と芝生は優しき緑        大須賀 章

五七五七七言葉はみだしこぼれ落ち伝わらぬ気持ちシュレッダーにかけ ふじこ

朝焼けの冷気を顔に目覚めれば秋色染まる北の山々       縁寿

 

令和四年 九月の歌会より

二十九度までは扇風機 ”サンヨー”の古き良き風この身を癒す   笹谷 逸朗

スーパーに並びし秋刀魚スマートで可哀相だと伸ばした手をひく 小町

建ち並ぶ暮石の翳る暑き午後百合もつ姉妹墓は何処かと     いつつばし

秋雨が秋の終りを告げるのにコロナは何時終りを告げる     初ちゃん

杜の街欅も洗われ活き活きとジャズの音色に「スイング」してる 水すまし

裏五輪汚いお金で「お・も・て・な・し」陰で操る電通育ち   イタヤンマン

国葬と情緒に走り宣言す酷税に泣く民置き去りに        大須賀 章

栃の実を拾いて卓に並べおり童に似た顔ひいふうみい      まさこ

「虫達の食べた残りを食べてます」笑顔爽やか若き移住者    晴

コロナ禍をマスクつけずに街歩きストレス溜まりやっぱりマスクだ かつゆき

中山をゆだり登ればタチアオイ猛暑に負けずすっくと立ち居   笑福

行き来するサイレンの音止まぬまま一日は過ぐコロナ禍の夏   ふじこ

 

令和四年 八月の歌会より

今宵また酔いつつ歌う上海を離れし時の何日君再来       笹谷 逸朗

懐かしきことわざ辞典手に取りて思い出しつつページをめくる  初ちゃん

夏の夜の花火遊びを知らぬ子らネットで見せる線香花火     いつつばし

花火見て陽水きいてビール飲み私の体はほろ酔い気分      かつゆき

子燕が嘴あけて囀れば「ばいばいまたね」幼は手をふる     小町

花いちもんめ何時までも呼ばれずにみんな取られて一人ぼっちに 晴

廃屋の小枝繁れる細い道涼しくもあり悲しくもあり       まさこ

戦争は人の心狂わせて廃墟となりし慄然の国          水すまし

乾杯も思いつかないコロナ禍に一人さみしく今夜も手酌     笑福

山の日に七ツ森の古民家へモカコーヒーの蘊蓄を聴く      大須賀 章

玄関で大きな声の孫の顔この世に残す一粒のたね        縁寿

幸せな気持ちにさせて生きているあなたと過ごす今日のひと時  イタヤンマン

閖上の海風さやか夏忘る即席の友と地ビール交わす       ふじこ

 

 

令和四年 七月の歌会より

みそ汁の絹さや玉葱香る朝食欲そそる猛暑の一日       水すまし

十字架の飛行機雲が現れたヒマワリが咲く平和な日本     かつゆき

ポケットにいっぱい入れて無くさずに平和を持つと「沖縄慰霊の日」の少女 小町

ママチャリでピンクづくしのおじさんが皐月晴れの街ゆうゆうと行く 晴

車窓には黄金色した畑一枚北の大地は今が麦秋        笹谷 逸朗

帰らずに夏空を舞う白鳥よ未練無いのか理不尽の邦      いつつばし

夕暮れの人影寂し資福寺は幽玄色華あじさい浮きて      まさこ

豪雨にも負けずに凛と咲いているピンクのバラに元気をもらう イタヤンマン

老化とは細胞老いたる病気らしストレスを避け笑う薬を    大須賀 章

夏到来縁側並び種飛ばし祖母が切った真っ赤なスイカ     ふじこ

昨年の七夕の願い短冊の世界平和も散りじりに散る      笑福

道行けば垣根でほほえむ紫陽花の花に朝露キラリと光る    縁寿

 

 

令和四年 六月の歌会より

尿漏れを抑えきれるない吾を見もう一人の吾に憐れみの眼よ 笹谷 逸朗

春宵やアルバム整理懐かしく時の流れに忘られぬ人     水すまし

うりずんの季節が来れば夏近し今年はどんな出逢いがあるか かつゆき

娘から久の電話に安堵するメールに元気と書かれていても  いつつばし

庭にバラ蕾がひとつ咲きそうな水やり乍ら心わくわく    初ちゃん

もしかして鳥のさえずり亡母の声一羽だけ来て目の前で鳴く イタヤンマン

アカシアに真珠のような雨のつぶ西田さち子の歌くちずさむ 小町

栴檀の香漂う梅雨晴れ間古人も通りし道を         まさこ

柳葉を静かに揺らす夏の風小川の流れ岸辺を洗う      縁寿

豪雨テロ特大の雹だ真っ白だこれは異変だラニーニャ来たる 笑福

杉の木にしっかりからむ藤の花人に頼りて生きるも人生   晴

母の声時過ぎ忘れ恋しくて記憶を戻し子供に還りし     ふじこ

昼下がり文学館の中庭に喧噪逃れ迷えるやんま       大須賀 章

 

令和四年 五の歌会より

風にとび根をはり隣とシェアをするシャガやひなげしあんたらえらい  晴

尺八とギターコラボす松音寺月影冴えて庭石白し       大須賀 章

踏み入れば名も知らぬ花一面に雲の平は天空の庭       いつつばし

切り取った列車の窓に季節過ぐ遠く山々葉桜走る       ふじこ

山並の残雪映す水鏡早苗がゆれる青空の下          縁寿

思い出す玄関先で手を振れば笑顔で応え出掛けた亡母     イタヤンマン

幸せを感じる心持てたのは多くの出逢い知恵授かりて     水すまし

友達が待っててくれるあたたかさここは沖縄きむどんどん   かつゆき

五月雨の小粒の真珠緑葉に「結愛」という名の薔薇は微笑む  まさこ

見返りを求めてならぬとは言うが秘かに願う我が子の想い   初ちゃん

耕して土にまみれるも偶によし空を仰ぎて深く壱吐く     笹谷 逸朗

颯爽と髪をなびかせ自転車をこぐ女性の脚さわやかに     ヒカル

あれもこれも君は一度に用事言う千手にあらず吾の手は二本  小町

  

令和四年 四の歌会より

散策の春一番に背を押され辿る道筋廃屋に梅         水すまし

桜咲く数日間の命だがどんな思いで残して散るか       かつゆき

老いてなお人を愛する気を持とうトキメイテ行こう呆けぬためにも イタヤンマン

人生を一歩一歩と歩みゆく足をよじりて余生をあゆむ     ヒカル

草を抜き耕し起こせし畑に降る花びらあまた長雨の春     笹谷 逸朗

放火あび戦車に踏まれなお芽吹く明日への希望向日葵の種   いつつばし

ポール持ち一二一二と足踏めば桜はぽっぽと蕾ふくらむ    まさこ

詠みたくて描きたくって書きたくてシニアの作品輝く展示会  小町

桜散る今年は今年の顔をして遠い国では戦争始はげし     晴

腕しなり奪三振は十九個二十歳の郎希完全試合        大須賀 章

雪溶けて半年ぶりの里帰り冷えたる墓に熱いお茶出す     ふじこ

満開の桜の下に寝転びて白雲浮かぶ空にすわれし       縁寿

 

令和四年 三の歌会より

黒海の波よ高まれ侵略のロシアの艦が引き返すまで      笹谷 逸朗

さあ春だ心も身体も力ぬき老いを追いやり自由に飛ぼう    小町

目が覚めて空見上げれば迷い雪昨日の春が足踏みしてる    初夢

彼岸入り地震で墓は大丈夫か不安を抱え削り花持つ      大須賀 章

コロナより大災害より恐ろしや暴走止まらぬ暴君政治     晴

乳母車小さなこぶし見え隠れコブシの花がグウチョキパア   かつゆき

函館と塩釜の女は息災か夢路を辿る春の夕暮れ        ヒカル

「死にたくない」つぶらな瞳の幼子の声聞けプーチン己は悪魔か まさこ

ささやかな今の幸せ悦びは今日と言う日も生きてる灯     水すまし

音も無く春が静かにやってきた一雨ごとに紅梅ひらく     縁寿

ひと冬も寒さに負けず咲きつなぐ庭の山茶花私の元気     イタヤンマン

腰屈めそろりそろりと雪坂を見れば我が影またも老けゆき   いつつばし

風の間に子供らの声ただいまと聞こえた気がした母たる記憶  ふじこ

 

令和四年 二の歌会より

次々と老舗の店が消えていくふと思い出すおかみの笑顔    かつゆき

マスクつけ笑顔の見えない幼児までコロナは人の会話も断ちて 水すまし

如月の月は冴え冴え冬を押し春を迎える決意の輝き      小町

いつもみる見る大沼酒造立呑屋いつの程にか看板替わる    笹谷 逸朗

アベノマスクに使った税金返してよ片隅に載る記事みて叫ぶ  晴

桜木の古色の丸き宿木に春巡り来て萌芽の気配        大須賀 章

暮れ雪は緞帳のごと隠しおり街の灯りも車の音も       いつつばし

「鬼は外」豆を撒けども独居家は「おもしゃぐね!」と鬼も素通り まさこ

前向きに生きて行こうぜこれからも限りある日々楽しみながら イタヤンマン

寒空に墓参りする若き女枯花片してじっと佇む        ふじこ

残雪を割って顔出す蕗のとう春の日ざしに緑が匂う      縁寿

ヤアヤアヤアいいよいいよと声かけるクレイジースイープのロコ・ソラーレ ヒカル

 

令和四年 一の歌会より

レジェンドになっていくのか内村は引退会見の笑顔さわやか  笹谷 逸朗

会話する相手なき日は新聞のコラム切り抜き大声で読み    水すまし

コンサート友の作ったブローチを身に添え弾けば音は踊れり  まさこ

店頭で短歌の本を立ち読みて頷いているあったかな本屋    かつゆき

到来の凍み豆腐いれ雑煮炊く母が好きだったとしみじみと食む 小町

枯れ枝に目を閉じ並ぶ雀二羽吹雪の中で何を待つのか     いつつばし

北風のこの寒い中ミニの足見てくれ娘風邪ひき寝込め     イタヤンマン

脚病みし安静を要し篭ること一ヶ月になり歩数計ゼロ     ヒカル

平成のシニアアイドルきんさんぎんさん令和は筋トレタキミカさんだ 晴

風雪の年末年始寒波来るコロナ五波よりましかも知れぬ    大須賀 章

雨の日の川下りゆく屋形船乗る影あらずも小粋な風情     ふじこ

夜の空優雅に飾る流れ星寒さ忘れてじっと見上げる      縁寿