平成27年12月の歌会より

冬空に欅彩るページェント杜はやさしく物語  (ドラマ)  育み   水すまし

侵略と難民つなぐパリテロに西洋の価値無に帰す兆し     びひゃーな

暗い雲風に湧く森唸るなり魔王の声にも聞こえてきたり    雅仙

友来たる喪中ハガキ見たからと遠路の焼香涙がにじむ     イタヤンマン

お茶の友干し柿ひとつ皿の上色は黒いが甘さは十分      縁寿

安達太良はとく懐かしき故郷がこの山のべにあるかのごとく  笹谷 逸郎

異国の地邦の人には逢えずとも邦の車は何処の道にも     いつつばし

棚田にて老若男女入りまじり豊作祝い踊り喜ぶ        スナメリ

暖かき大雪迎え日向ぼこ蟷螂の立つ南階段          大須賀 章

その昔恐竜叫びし大空に今クレーン車鎌首もたげ       まさこ

孫の字が俺に似ているにんまりと誰にも言わずほほえむじじい こうさくどん

車窓より望む山々色好きて一瞬の晴れ間虹の橋かかる     いちょうまち

今年は苦く楽苦くの年なれど千秋楽には無事といいたし    宮野 小町

木の葉雨閑寂のバラうつむいて色香は淡く見つめれば愛    さちこ

平成27年11月の歌会より

無農薬続けて五年畑にはみみず・芋虫・とかげに雀      笹谷 逸郎

小春日の縁側で義母はクルクルと柿の皮剥くあざやかにむく  宮野 小町

秋日和船が居並ぶ凪の海三崎の宿に富士も顔みせ       水すまし

小春日の波間に休む渡り鳥旅の疲れを水面に映す       縁寿

庭に咲くボケと呼ばれる俺だけどまだまだ呆けない時期を忘れず いちょうまち

切々と時代を越えつつ訴えるフォーク演歌の赤色エレジー   大須賀 章

同時テロ神と叫んで人殺す神とは何か悩んでしまう      イタヤンマン

異国にておにぎり食し思いおり吾はやっぱり日本の民と    いつつばし

沈みゆく夕日を見つめ影のよう白鳥白鳥飛びくる七北田川へ  スナメリ

柿食うか妻が質問ハイと僕あなたでないの俺はぼう然     こうさくどん

北上のたゆとう流れに寄り添いて明治息ずく登米の町よ    まさこ

弟はまだ消されずに居るかしら認知すすみし姉の心に     びひゃーな

平成27年10月の歌会より

花小道お地蔵様が見てござる今日のひと時楽しくあれよと   まさこ

パトカーの咎める声は我に向け黄色信号駆け抜けたため    雅仙

久しぶり介護無くなり街に街に出た都会の変化浦島気分    イタヤンマン

政治家を悪い悪いと言うけれど選びしは民そこが問題     こうさくどん

シャム猫が三匹でじゃれてる秋日和我が家の宝かわいいやつら スナメリ

都市計画街路樹伐採蝉雀居場所追われて鳴き声聞けず     いちょうまち

戯れに三つ四つ拾うどんぐりの縄文の里美しきかな      ビヒャーナ

亡き父の常備薬だっっと思い出す小さなセンブリ野に見付け  宮野 小町

秋日和旅の係は迷ガイド車内は笑顔虹も手を振り       水すまし

障子開け盆のお酒と枝豆で酔眼に写る秋の月         縁寿

紅葉狩り栗駒山の頂は風音高く早々下山           大須賀 章

宵越しの花や一輪夏椿光る朝露花びらにのせ         いつつばし

平成27年9月の歌会より

鳴き声が日増しに細る盆明けの鈴虫籠は阿修羅の世界     笹谷 逸郎

夏バテの雀が二羽で寄り添って餌を探すか猛暑の中を     スナメリ

愛情という振掛けまぶし渡したる弁当夕べに無言で帰る    宮野 小町

透明な傘が奏でる雨音に映画のごとくステップ踏みおり    いつつばし

内沼の蓮の間を縫う小舟涼やかな風これぞ極楽        大須賀 章

地下道の手摺りを握り階登る病める膝腰痛みに堪えて     水すまし

動物は人間よりも利巧かも奴隷原爆過労死もない       こうさくどん

聞ゆるは赤子か猫か夏の朝透き通るよな悲しみ走る      びひゃーな

芋の葉の露を集めて墨を摺る幼き頃の七夕の日よ       まさこ