令和元年12月の歌会より
地獄でも天国だって構いません何処か穴場を探しませんか 笹谷 逸朗
青山を行けども深く迷いえりアメーバーのごとく脇道さぐる 三星 ヒカル
小さな靴片方だけがかけてある「早く見つけて」とせがむ靴裏 晴
北の地へ海底トンネル走り抜け新幹線は人々繋ぐ 水すまし
湧き出ずる多き思いは歌俳句君に献杯ビール飲み干す いつつばし
丸森の筆甫の里は冬仕度ご先祖様の流され哀し 大須賀 章
年寄りの年に一度の同期会顔を見るなりおお生きてたか イタヤンマン
古希なんぞ可愛いもんだと言いたげに卒寿こえてし義母畑にせいだす 小町
大粒の真っ赤な筋子が二腹も北の友からいつものお歳暮 縁寿
令和元年11月の歌会より
色褪せた枯野に群れて泡立草生命進化の陣取りゲーム いつつばし
風渡る路地裏通り金木犀甘き香りは儚く散りて 水すまし
温暖化のせいで台風巨大化す気象学者は淡々と報ず 晴
将門の流れ汲むかや相馬藩災い超えて目指せ明日を 笹谷 逸朗
通学時バスで見初めた可愛い娘我が青春の遠き想い出 イタヤンマン
広瀬川百万都市の浅瀬には命尽きたる鮭の屍 まさこ
柴栗の一個ポロリといできたりゴルフ帰りの夫のポケット 小町
二口の三方倉山に虹架かり紅葉の森我を誘う 大須賀 章
公園で一人腰掛け振り向けば静かな秋に落ち葉が囁く 縁寿
紀の国の山間に落つ夕日浴び湯煙も染むゆらゆら赤く 三星 ヒカル
令和元年10月の歌会より
橅の木に熊の爪あと残りたる山賊出そうな山刀伐峠 晴
ぬばたまの闇を蹴散らし猛狂う大気の怒りに人は術なし まさこ
台風を予感しつつも雨上がり相馬漁港に秋風さやか 笹谷 逸朗
蝋燭の燃え尽きたるように赤々と咲く曼珠沙華揺れる曼珠沙華 小町
法面に真っ赤に咲いた彼岸花水面を染めてネオンの流れ 縁寿
若者はバイク蹴散らし暴走す高齢者は車で逆走 三星 ヒカル
海辺より連れてこられし浅蜊たち怒り爆発潮吹きはじめ 水すまし
秋風に一人寂しく佇めば真っ赤な夕陽心に沁みる イタヤンマン
月も無い夜のしじまに寄せ来るは腰の痛みと遠き虫の音 いつつばし
秋の宵「ラストダンスは私に」と劇場内に歌声響く 大須賀 章
令和元年9月の歌会より
杖ついて横断歩道を渡りきるただそれだけで何故か嬉しき まさこ
豊水をバッサと割れば甘味の水ブシュッと飛び散るまな板のうえ 小町
不漁でも痩せたサンマもサンマなり旬のおかずに秋を味わう 三ツ星 ヒカル
窓辺では薄が揺れてお供えもあとは名月待つばかりなり 縁寿
彼岸入り曼珠沙華の茎伸びて庭先の風さらりと涼し 大須賀 章
世界中平和であれと願いつつ漆黒の中花火舞いとぶ スナメリ
建ち並ぶ古き墓石かげる午後墓石洗う娘と母と いつつばし
平成の真中に生まれし球児らはキラキラネームにニコニコ笑顔 晴
犬掻きは学童疎開の小川にて虻を避けよと憶えしもぐり 水すまし
猛暑日を幾日耐えしか玄関の脇にからびしシオカラトンボ 笹谷 逸朗
我々もこんな時代があったのか園児ら散歩ピーチクパーチク イタヤンマン
令和元年8月の歌会より
つばくらめつゆ草に点す蛍や手のひらをそっと開きた居るを確め 水すまし
西陽背に日傘で幼子囲いたる手を引く婆は汗も拭かずに いつつばし
線路端やさしく揺れる月見草斜めになりて電車は過ぐる 晴
しっかりと下山の時代歩みたい光陰綾なす来し方見つつ 笹谷 逸朗
居残りの白鳥四羽頭上とび夕餉を求め大きな羽音 スナメリ
蝉の声教会の鐘暑き陽を抜けて響けり終戦記念日 まさこ
短冊に折り鶴とまり願いごと叶えてあげると天に舞い立つ 小町
お迎えに行灯ともすお盆の夜思い通じて亡母の夢見た イタヤンマン
朝露にコロコロと鳴く虫の声秋を忘れず今年も唄う 縁寿
オリンピック出たいと思う十八そこまで生きたい八十一のわれ 三星 ヒカル
蒸し暑き七夕の宵立秋の秋八幡宮の蝉合唱団 大須賀 章
令和元年7月の歌会より
つばくらめ欅並木の定禅寺ブロンズ像を風とかすめて 水すまし
平家琵琶響き源氏の蛍舞う坪沼八幡夏越し祭り いつつばし
達者だな私の横をスイスイと荷物を背負い追い抜いて行く スナメリ
良き仲間老後の暇を支え合うシニアサークル楽しい時間 イタヤンマン
どんよりと利休ねずみの空に浮くほんのり紅いねむ合歓の花 まさこ
参院選団塊世代の現実は家事見習いの年金暮らし 大須賀 章
陽のささぬ日々続きしも紫陽花は七色十色さりげなく出し 笹谷 逸朗
水筒の氷カラカラ音させて少女はゴクンと水をのみほす 小町
雨上がり薄紫の花びらに雨水をのせて輝く菖蒲 縁寿
銀色に輝く鰯の大群はエイをばさけて華麗に逃げる 晴
寝ては覚め覚めても鬱つ仕方なく皆んな困っているこの世に生きる 三ツ星ヒカル
令和元年6月の歌会より
凄まじい滝音聞いて胸おどる生きてる地球我もまだまだ スナメリ
海の子ら釣竿をさげプロ並みのスタイルで釣るカレイアイナメ 三星ヒカル
我が庭に真紅のバラが咲き誇る赤い情熱我に与えよ イタヤンマン
あゝもしもカリブ海ツアーに行ったなら国に帰るを忘れてしまう 笹谷逸朗
父の日に寄せて持ち歌考える昭和の香り昴秋桜 大須賀 章
それぞれの一日を乗せ去りゆきぬ車窓朧げ終電の駅 いつつばし
「みちのくの中心です」と老ガイド平泉郷ひかりまばゆし 晴
六月の黒い畑にねころびて真珠の玉葱空をみつめる まさこ
早乙女が並んで田植の光景は画像の世界昭和は遥か 小町
補聴器をつけて楽しむカラオケに聞こえ調節スマホで操作 水すまし
誕生日祝いの花は薔薇一輪強い香りが胸まで届く 縁寿
令和元年5月の歌会より
槻の木の葉の影ふかしそよろ吹く五月の風に遠き笛の音 笹谷 逸朗
豆の花白き蝶々の形して五月の風にひらひら泳ぐ まさこ
錆びついた線路が伸びる飯田線礼して降りる学生二人 いつつばし
遊歩道桜のトンネルくぐり抜け多摩湖に向かい心地良き汗 水すまし
蕉翁の足跡辿り多賀城を五月雨の中縦横に歩く 晴
阿呆かいな令和令和と騒ぎ過ぎどこが変わった皆んなの暮らし イタヤンマン
鉛筆を転がし五択答えたるそれでも生きれた私の人生 小町
田植え終え早苗がそよぐ初夏の風温んだ水で蛙が遊ぶ 縁寿
昼下がり東和の町の毘沙門天キツネとカモシカ参道を行く 大須賀 章
春の海のたりのたりと猫島へいざなうわれも猫じゃらし持ち 三星 ヒカル
平成31年4月の歌会より
二百年生きた命を繋ぎおり切り株の根に楡のひこばえ いつつばし
桜花空気が冷たくかわいそうその下で飲む熱燗旨し スナメリ
陽光の下花芽摘む小松菜に小カブせいさい菜混ぜ味噌汁へ 笹谷 逸朗
ボランティア通う小径に茶色猫帰りは黒猫春陽にまどろむ まさこ
鳥帰り広瀬の河は無音にて今しばらくの草ふみを待つ 晴
さわさわと唄うが如く梅田川耳そばだてて桜の揺るる 小町
東京に思わぬ春の淡雪が童楽しげお口で受けて 水すまし
さくら花散りゆく花のひとひらに老いの我が身に行く末想う 縁寿
春爛漫愛子の宿の標柱の先に西山臥龍梅あり 大須賀 章
私なら華やか過ぎる桜よりあなたに似合う鈴蘭が好き イタヤンマン
校庭に桜が似合う喜びも悲しみもありはらはらと散る 三星 ヒカル
平成31年3月の歌会より
父の短歌一つも無いと言われも厳しさばかり寂しく浮かぶ イタヤンマン
救急の待合室にピンポンとエレベーターの音のみ響く まさこ
防潮堤先に黒鳥憩う朝蒲生干潟に葦牙の萌え 大須賀 章
春一番バス待つ人は襟たてて蹌踉ける足元タップのように 水すまし
背なの湯気煙草の煙と昇りゆく冬晴れの屋根雪かき一服 いつつばし
去年師走いぶかりながらキヌサヤを蒔きし一条の畝に春陽が 笹谷 逸朗
青空にスーッと伸びた緑の芽良かった生きてて梅の古木が スナメリ
一羽だけ離れて遊ぶ白鳥が餌を求めて静かに近よる 縁寿
雨水の夕しとしと降れば傘の波駅の中へと吸い込まれゆく 小町
畑仕事あなた想いて力出す胸まで熱き寒々の朝 こうさくどん
発電所の煙たなびく風もなく真っ直ぐに立つ廃屋越しに 三星 ヒカル
平成31年2月の歌会より
柚子の香に湯上がりの肌潤いて喉越しの良さ至福のビール 水すまし
浜街道ハウスの実りいちご郷震災七年十一ヶ月 大須賀 章
カラオケで男四人がボケ防止色気は無いが絆は深い イタヤンマン
寺小径立春の嵐治って杉の小枝をバリバリと踏む まさこ
如月の固き地面を押し開けし蕗のつぼみに日差し柔らか 笹谷 逸朗
睡蓮の清らに揺らぐ泥底にわれ等が知らぬ秘密が動く 三星 ヒカル
寒風をものともせずに大空を隊列組んで白鳥北へ スナメリ
如月の色なき風が万作の黄色を抜けて春にちかずく 小町
床の間に一輪飾った寒椿障子の外は静かに春が 縁寿
支えつつ支えられつつ腕組みて嫗二人は遮断機渡り いつつばし
平成31年1月の歌会より
誕生日敬老乗車証をチャージする君の未来は十倍モード 大須賀 章
季節ごと咲いてくれるよ庭の花手入れをしてた亡母目に浮かぶ イタヤンマン
カピバラが柚子湯に浮かぶ画面見る我が家の煮物は一切れの柚子 小町
七草の粥の緑を口の中春のいぶきが体に萌える 縁寿
噛みしめし旨き鰰音のよさ善き年願い酒酌み交わし 水すまし
雪道に足跡残し何処行く孤独の街を野良猫一匹 いつつばし
吹雪いてるスキー場見れば滑ってる親子二人でダンスのように スナメリ
冬の日の雲なき空にカラカラと風に歌いし高き桐の実 まさこ
寒の下サヤエンドウが大地より若緑色に芽吹きはじめり 笹谷 逸朗